庭の桜が散り塗る終和歌
にわのさくらがちりぬるをわか
わが家の庭のしだれざくらの小枝が春風に吹かれて柳のように揺れている。
小枝のピンクの花びらが風に乗ってひらひらと舞い散っている。
まるでピンクの蝶が舞っているようだ。
このピンクの花びらの散り落ちてゆく先には、長壽と魔よけの靈草「蓬」が若芽を噴出している。
「霍公鳥来鳴く五月の菖蒲草蓬かづらき酒宴」と、万葉集大伴家持の長歌の一節にも、宮人が大君の任きのまにまに仕ふる国の年の内の事かたね持ち都辺參ゐしあなたをまちこがれて、五月菖蒲草や蓬を縵にして編んだ冠をかぶって酒盛りをして心を慰めようとした情景が歌われている。
不老長壽の仙人が住むといわれる
「蓬莱山」があるといわれた仙郷には、今ではだれも見向きもしない蓬だが、古代人にはこの繁殖力が盛んで独特の香りがする「蓬」が長壽と魔よけの靈草として尊ばれていた。
田舎でも、仙郷はともかく、よほどの山奥にでででもなければ「蓬」を摘む人々の姿を見かけることが少なくなってしまった。
安心して食せる「蓬」がだんだん、少なくなっている、ということでもあろう。
かくいう菜翁が旨さんも、かっては「蓬」摘みに精出したものである。
昨今では、外来種と見られる雑草がはびこって、蓬莱の国古来の草々が絶滅してしまいそうな様相を呈している。
春先の野菜たちは、雑草と共に地中の水分を分け合って育ってこそ、柔らかくて美味しい野菜に育つものだ。
せめて、「蓬莱國人」として日本古来の雑草を尊ぶ心だけでもせめて片隅にとどめて、自然破壊に鈍感にならないようにしたいものだ。
(1) よもぎは、民間薬として、切り傷、打撲(打ち身)、子宮出血、痔出血、脱肛、かぜ(感冒)、血便、食あたり(食傷)、のどの痛み、せき(咳嗽)、はれもの、腹痛、下痢、ぜんそくなどに効く、とされている。
(2)よもぎの葉を精製してもぐさとして灸治に利用されていることはよく知られている。
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